活動報告
2026/03/06
防災と仲間との出会いから育まれた3日間
― デフノバ未来留学 in 宮城 活動報告 ―
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防災と仲間との出会いから育まれた3日間
― デフノバ未来留学 in 宮城 活動報告 ― -
2025年8月、デフノバは宮城県で「未来留学」を開催しました。大阪からの参加者と宮城の子どもたちが集まり、年齢も背景も異なる仲間たちが3日間をともに過ごしました。
テーマは「防災」と「仲間との出会い」。
初めて飛行機に乗る子もいて、「ドキドキ半分、楽しみ半分」で始まった旅。
しかし帰る頃には、「次は5泊したい!」と胸を張る姿がありました。
この3日間は、子どもたちにとって“学び”であると同時に、“自分らしくいられる居場所”を実感する時間となりました。
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宮城の地で出会った、震災の記憶と「生きる力」 -
宮城県は、東日本大震災の記憶が深く残る土地です。
「災害を“知る”ことで、自分の命を守る力を育ててほしい」そんな思いから、デフノバは未来留学の開催地として宮城を選びました。
特に、きこえない・きこえにくい子どもたちにとって、防災はより重要なテーマです。
アラーム音が聞こえない、避難の呼びかけが届かない、情報が文字化されない──。そうした状況の中で自分を守るには、「自ら気づき、判断し、行動する力」が欠かせません。
未来留学は、単なる旅行ではなく、社会とつながりながら“生きる力”を育てる学びの場として生まれました。
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年齢も地域も超えた、子どもたちの出会い -
参加したのは、小学4年生から高校1年生までの子どもたち。
大阪から9名、宮城から15名が集まり、ほとんどの子が初対面でした。保護者の同行はなく、子どもたちだけで過ごす3日間のプログラムです。
引率スタッフ3名、現地スタッフ5名に加え、地域ボランティア10名、学生ボランティア3名が活動を支えました。
仙台空港に到着した直後は、少し緊張した空気が漂っていました。
しかし、同じようにきこえない仲間が集まっていることに気づくと、その緊張はすぐにほどけていきます。
自然と手話が交わされ、
「どこから来たん?」
「名前は?」
と、笑顔で声をかけ合う姿が広がりました。
最初の数分こそぎこちなさがあったものの、気づけば、まるで以前からの友だちだったかのように笑い合っている──そんな光景がとても印象的でした。
安心できる仲間との出会いが、子どもたちの表情をやわらかくし、学びへ向かう集中力を自然と高めていきました。
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考え、動く力を育てる防災プログラム -
◆ 1日目:体験から学ぶ「命を守る防災」
1日目の大きな柱は、防災学習でした。
講師としてお迎えしたのは、元自衛隊員の方。
「もし、今ここで災害が起きたらどうする?」そんな問いかけから、防災学習が始まりました。
まず出されたのはクイズ。
「身近にあるものだけで担架を作るとしたら、どうする?」
床に置かれたのは、棒や布、タオルなど、特別な道具ではありません。ところがこのクイズに、なんと全チームが正解。
「これは驚きです」と講師の方が思わず声をあげるほど、子どもたちは迷わず答えを導き出しました。
事前学習で学んだ知識を、ただ覚えているのではなく、「使える知識」として身につけていることがはっきりと伝わる瞬間でした。
続いて、実際に担架を組み立て、仲間を乗せて運ぶ体験へ。
「持つ側はどうしたら楽か」
「乗る人はどう声をかけたら安心できるか」
子どもたちは自然と役割を考え、声や手話で伝え合いながら動いていました。
さらに、心臓マッサージや匍匐前進にも挑戦。
床に体を近づけて進む動作や、力を込めて胸を押す動きは、決して楽なものではありません。
それでも子どもたちは真剣な表情で取り組みながら、
「もし本当に起きたら…」
「この力で足りるかな…」
と、“想像”と“体験”を結びつけて考えていました。
防災を「怖い話」として終わらせるのではなく、自分の体で知り、考え、行動につなげる学び。それが、この1日目の防災学習でした。
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◆ 2日目:門脇小学校で学ぶ「伝え続ける防災」
2日目には、門脇小学校跡地を訪問しました。
この場所で子どもたちが直接お話を伺ったのは、震災当時、校長を務めておられた鈴木校長先生です。
テレビや資料ではなく、**「その場にいた人の言葉」**として語られる体験談に、子どもたちは一言も見逃すまいと、真剣な表情で耳と目を傾けていました。
「怖かった」
「大変だった」
という感情だけで終わらず、なぜ助かったのか、どんな判断が命を分けたのかを丁寧に伝えていただきました。
その後、実際の避難ルートを子どもたち自身の足で歩きました。
「ここで、こんなことが起きていた」
「この判断が、生死を分けた」
同じ場所を歩きながら話を聞くことで、防災は“過去の出来事”ではなく、**「自分たちの今と未来につながる現実」**として、深く心に刻まれていきました。
この門脇小学校訪問は、実は2回目の学びです。
一度きりで終わらせず、継続して関わることの大切さも、子どもたちは感じ取っていました。
「前より、話の意味がわかった」
「去年より、考えられた気がする」
そんな声が自然とあがり、学びは積み重なることで深くなることを、子どもたち自身が実感していました。
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デフノバの防災学習が目指しているもの -
デフノバの防災学習は、「怖さを植えつけること」を目的としていません。
もしもの時、どう考えるか。
仲間と、どう助け合うか。
そして、自分の命を、自分で守れる力をどう育てるか。
そのために、体験する・考える・対話するというプロセスを、何より大切にしています。
そこには、きこえない・きこえにくい子どもたちだからこそ必要な視点があります。
たとえば、
もし近くに、手話で意思疎通ができる人がいなかったら。
もし、旅行先など、土地勘のない場所で災害が起きたら。
もし、音の情報だけで状況が伝えられていたら。
そんな「イレギュラーな状況」は、決して特別なことではなく、
きこえない子どもたちにとっては、日常の延長線上に起こり得る現実です。
だからこそデフノバでは、「正解を教える防災」ではなく、**“想像する力を育てる防災”**を大切にしています。
この3日間で子どもたちは、防災を「誰かに守ってもらうもの」ではなく、**「自分たちで向き合い、考え、選び取るもの」**として学びました。
そしてその学びは、災害時だけでなく、
知らない場所に行くとき、
初めての人に出会うとき、
社会の中で生きていくすべての場面につながっています。
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子どもたちの声と成長 -
「ドキドキ半分、楽しみ半分やったけど、来てほんまによかった」
「防災は怖いだけじゃない。知るって大切」
「宮城に友達ができて嬉しい!」
体験を通して、ただ話を聞くだけでなく、自分で考え、言葉にし、行動する姿が増えていきました。
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参加を支えた人たちの実感の声 -
【保護者の声(抜粋)】
「帰るとき“寂しい”と言っていました。それだけ大切な出会いがあったのだと思います。」
「参加後、話をしっかり聞くようになりました。」
「今まではお母さん頼りでしたが、自分の言葉で大人に聞けるようになりました。」
「経験したことが自信につながったようです。」
「話を聞くだけでなく、実際に体験し考える内容が素晴らしかったです。」
【宮城スタッフの声】
「毎年恒例のサマーキャンプも3回目。今年は未来留学として開催できました。地域ボランティアの方々も毎年この活動を温かく見守ってくださっています。デフキッズたちのいきいきとした笑顔が、これからも続くことを願っています。大阪と宮城のスタッフの関係性が、この場を支えています。」
【大阪から参加したデフスタッフの声】
「手話や視覚的コミュニケーションで自然に打ち解けていく姿に、“ここは自分でも大丈夫と思える場所”だと感じました。防災の学びを通して、デフであることを弱さではなくアイデンティティとして肯定し合う場が確かにありました。これは単なるイベントではなく、人としての基盤を育てる取り組みだと思います。」
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参加者の感想とアンケート -
★仙台松原
毎年恒例となったサマーキャンプ@東松島も3回目となりました。年に一度会えるという関係の中で、さまざまな体験を共にするこのキャンプは、子ども達だけでなくスタッフにとっても貴重な場となっています。
地域ボランティアのご婦人たちも、被災地域を忘れずに毎年集うこの活動を温かく見守ってくださっており、自然な形で震災復興の一助にもなっていると感じています。
その真ん中にいるデフキッズたちのイキイキとした笑顔の体験が、これからも続くことを願っています。そして何より、この場を毎年作り続けている大阪と宮城のスタッフの関係性が、これからも続いていきますように。
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★ろうスタッフ 須田
宮城での「デフノバ未来留学」にスタッフとして参加し、聴覚障害のある子どもたちと直接関わる貴重な機会となりました。
子どもたちは手話や視覚的コミュニケーションで自然に打ち解け、普段の学校や地域ではなかなか得られない「自分でも大丈夫」と思える居場所が生まれているように感じました。表情がとても柔らかく、生き生きとしていたことが印象的でした。
防災ワークやグループ活動など初めての体験にも、互いに支え合いながら挑戦する姿が見られ、「デフであること」を弱さではなくアイデンティティとして肯定できる場になっていると感じました。
耳が聞こえないことや手話を使うことはハンディキャップではなく、文化であり可能性だと思います。スポーツだけでなく、教育や地域の分野でも活動を続けていきたいと思います。
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★保護者アンケートより(抜粋)
保護者からは、子どもたちの成長を感じる声が多く寄せられました。
・「帰るとき寂しいと言うほど、良い出会いと経験ができた」
・「防災について体験しながら学べた」
・「初対面の人との共同生活を経験できた」
・「他地域の子どもたちとの交流で視野が広がった」
また、参加後には
・「自分の言葉で大人に質問できるようになった」
・「自信がついた」
など、子どもたちの変化を感じる声もありました。
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未来を守る力は、伝えることから始まる -
この未来留学で子どもたちが学んだ防災は、自分だけが助かるための知識ではありません。
もしもの時、
そばにいる大切な人を守るために。
そして、自分たちが学んだことを、まだ知らない誰かに伝えるために。
「こうしたらいいよ」
「こんな時は、こう考えたらいい」
その一言が、誰かの命を守ることにつながるかもしれない。
デフノバの子どもたちは、防災を“自分の中だけに留める学び”として終わらせていません。
学んだことを、家族へ、友だちへ、学校へ、地域へ──より多くの人たちに伝えていくこと。
その小さな一歩を重ねていくことこそが、未来を守る力になると、子どもたちはこの3日間で実感しました。
防災を学び、考え、行動し、そして“伝える人”になること。
このミッションを、デフノバの子どもたちは、これからも持ち続けていきます。
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今後の展望・ご支援のお願い -
未来留学は、子どもたちに自信・自立・仲間とのつながりを届ける場です。
保護者からは
「もっと多くの人に広まってほしい」
「全国の子どもたちにも体験してほしい」
という声が寄せられています。
この学びを継続し、さらに多くの子どもたちへ届けるためには、皆さまのご支援が欠かせません。
きこえる・きこえないに関係なく、子どもたちが挑戦できる社会をつくる。
その一歩を、これからも子どもたちとともに歩んでいきたいと考えています。
未来留学の継続と発展のため、温かいご寄付・ご支援を、心よりお願い申し上げます。
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